Brave Axe&Sword Reaver再録本
         雨の日の物語

               
                  2016年12月29日発売
                    A5版 36頁前後
                    本体価格400円


                      ※R-18、へクエリ

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雨をモチーフにしたコピー本『Brave Axe』と『Sword Reave』の再録本です。
雨に濡れた若を妄想するだけで管理人が楽し過ぎるという乱暴な理由で出た再録です。


※表紙描き下ろし、加筆修正有ですが、基本的に初回発行版と同じ内容です。


♪♪♪プレビュー♪♪♪(上記のリンク先からも読めます)

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【Brave axe】パート


ただ愛しさから、祈った。



 薄暗く、埃の臭いが湿った空気に混じって漂っていた。
 激しい雷雨が空を轟かせている。
 ここは山の中腹にある無人の教会。
 祭壇の傍にあった、もう殆ど溶けてしまっている燭台の蝋に火を灯す。淡い光が柔らかく辺りを照らした。
 ずぶ濡れのマントを脱ぎ、ふたりは安堵の息を洩らす。

「雨宿りだけは何とかできそうだな」
「そうだね……でも、随分前に人が居なくなったみたい」
「ああ、確かこの辺は数年前まで村があった――けど、山崩れで壊滅状態になったんだ。その時この教会に避難したそうだ。ここだけは無事だったんだな」
「エリミーヌ様のご加護かな」
「さぁ……まぁ、生き残った村人は近くの街や村で暮し始めたから、ここだけは取り残されているって訳だ。オスティアに近いからこっちまで話が届いたんだよ」
「そうか。でも何だか――」
「何だか?」

 結局それ以上の言葉はなかった。
 何が言いたかったのかわからないけれど、朽ちかけた祭壇がどんな場所よりも神々しく、俗っぽい言い方かもしれないが、神の愛や奇跡の力に満ちている、そんな気にさせた。

「なぁ、もし――」
「もし?」
「何でも願いが叶うとしたら、何を祈る?」




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「あ……ごめん、起こしちゃった?」
「いや……」
「だったらいいんだけど……」
「こんな時間にお祈りか?」
「うん、せっかくだからと思って」
 エリウッド片手で自分の腕を抱くようようにして視線を背後の祭壇に向けている。何を言えばいいのか思案しているみたいだ。
(お前、今自分がどんなツラしているのかわかってんのかよ?)
 その様子にヘクトルは内心苦々しい気持ちになっていた。つかつかと祭壇の前まで歩み寄り、先ほどまでエリウッドが祈りを捧げていた聖印を見上げる。
「まだ旅が続くだろうから、皆が無事でいられるようにって」
「……違うだろ」
「え?」
「それだけじゃねぇだろ。親父さんのこと、祈っていたんじゃねぇのか?」
 父の事――ヘクトルの言葉にエリウッドは表情を曇らせ、触れられたくない部分に触れられたようにビクリ、と身体を震わせた。
 ゆっくりと顔をあげ、ヘクトルと視線を合わせる。お互いに真っ直ぐ見つめ、逸らさない。エリウッドは驚きと痛みを込めて、ヘクトルは本心を得るために。
「……それも、ある……だけど!」
「泣けばいいじゃねぇか」
「何を言っている?」
「本当は辛いんだろ。だったら俺に縋ればいいじゃねぇか! それともあの時俺に任せたのに親父さんを止められなかったから、俺を信用出来ないってことか?」



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 どんなに酷い言葉をぶつけても、我を忘れて怒り、詰ることさえしない。あくまでも冷静でいようとする『一軍の将』らしいエリウッドの態度に、もともと気長でないヘクトルは強硬手段に訴えた。
 いきなりエリウッドの腕を強く引き寄せると、空いた手で腰を抱いてその身体を祭壇の上に押し倒した。乱暴で不敬な振る舞いにエリウッドは抗議の声を上げた。
「何するんだ!?」
「わかってんだろ?」
 言いながら上着の裾から素肌を探る手が差し入れられた。ザラリとした硬い皮膚の手が、男にしては木目が細かく、滑らかな肌を撫ぜる。
 羞恥心と怒りに背中が粟立った。
 ヘクトルが何をしようとしているのか理解できないほど初心でも浅い関係でもない。だけど 神に祈りを捧げる場所で、しかも先ほどまで祈っていた場所で、事に及ぼうとしている。そんな冒涜を受け入れられる寛容さはエリウッドに無かった。
「っ、ふざけるな、こんな場所で!」
「ふざけてねぇよ。手っ取り早くお前を素直にさせる方法、俺はこれしか知らねぇからな」
「嫌だっ、離せ……!」
「嫌だったら抵抗しろよ。もっとも、力で俺に適うと思うのか?」
「―――っ!」



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 もし、今言えなかった言葉を告げる時があったとしたら、その時は別れが迫っている時かもしれない――。
 ふと、そんな予感が過ぎった。




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【Sword Reaver】パート


「それじゃ、皆にもよろしく」

 一言、呟いた言葉に少しだけ不満そうな顔。
 別れ際にそういう顔をするのは、あまり嬉しくないけれど問い詰めるだけの時間も理由もなくて。
 春先の柔らかい空気が、少しだけ水気を含んで緑の香りを強くしている。まもなく夜明けを迎えるはずの空は曇っていて、朝の光がないのはさざなみのような静かな不安さえ感じてしまう。
――雨が来るかな……――
 ふと、空を見上げてそんなことを考えると、自分ではない声がその思いを言葉にする。
「雨、降りそうだな」
「そうだね、何とか次の町まで持てばいいけれど」
「だったらさ……お前……」
 もっとゆっくりしていけばいい、そう言いたいだろう彼が――けれど今日までに同じ言葉を何回も繰り返したために――珍しく躊躇いながら言葉を濁す。
 それでも何か言葉を捜していて、お互いに気まずそうな視線を空に向けた。
 静香に、けれど強く風が薙いだような音がした。
 それが合図のように、ざぁ、と雨が降り始める――まるで、降ってほしいと願った気持ちを叶えてしまったかのように。

「――やらずの雨かな」
「何だって?」
「あ……いや、何でもない……」

 あまり深く考えずに出てしまった言葉が恥かしくて、言葉を濁した。
 春先の雨は風を伴い、やがて激しく振り出した。とても今から出立するのは無理と判断して、雨が上がるまで待つことにした。
(それにしても……)
この雨はいつまで続くのだろうか。
数刻か、それとも丸一日か、それとも……。


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「何でこんな急に、ちょっと、待っ……!」
 壁に頬を押し付けるような形で、背中から抱きしめられる。背後からがっしりと押さえつけられる体勢に、上手くかわすことができない。
 エリウッドからしてみれば、初めてではないにしても、慣れない行為に戸惑いと羞恥心と、そしていきなりのことに腹立たしさも混じっていた。身を捩って抗議するも、まるで意に介さないかのように身体に触れてくる。
「急にじゃねぇよ。ここ何日もずっと我慢していたんだぞ。あのなぁ、俺がどんだけお前に惚れているかわかってんのか? もうすぐ帰るから、手出したらお前が辛くなるのもわかっているし、俺だって離したくなくなるだろ」
 後ろから耳元で囁くように喋られ、こそばゆいのと耳にかかる吐息が熱くて、その生々しさに背中がゾクゾクするのをおぼえた。
「それなら、今も――んっ」
 服の裾から大きな手を差し入れられ、節くれだった指が肌を探る。大雑把な見た目からは想像もできないほど器用に、その手は内側からも邪魔な衣服を取り去っていった。
「これだけ我慢しているところに、お前がんな可愛いこと言えば我慢が利かなくなるのぐらい解れよ」
「そんな理屈があるか、馬鹿」
「バカで結構、もう黙れよ。悪いけどこっちは限界なんだ」


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※次回、雪をモチーフにした物語を出す予定。季節外れになるのを覚悟で(爆)。

                            
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